ALC外壁を塗り替える前に知っておきたい!仕上がりと外壁寿命に差がつく6つの基礎知識

  • 完成後も、10年後も美しく 会社名:JPM 東大阪北店
    永濱 正明
    所在地:大阪府東大阪市長田2-12-5-102
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一戸建て住宅の外壁でダントツのシェアNo.1といえばサイディング。続いてモルタル外壁。
この2種類で、戸建て住宅の約8〜9割を占めています。
その次に当たる3番手の外壁として、時々耳にするようになったのが “ALC” です。

大手ハウスメーカー、ヘーベルハウスの…といえばピンとくる方も多いのではないでしょうか。
工場生産のALCパネルを現場で張り、ジョイント部にシーリングを打って防水し、塗装で仕上げるタイプの外壁です。

サイディングと比較すると外壁自体に厚みがあり、石造りを思わせるシンプルで重厚な質感が特徴的ですね。フラットなタイプ以外に、タイルなどを模した凹凸のあるデザインもあります。

外観的には非常に頑丈な印象を受けるALC住宅ですが、築10年前後を目安にシーリングの傷みが気になり始めることが多いようです。
例として、以下の写真をご覧ください。

[CASE 1] シーリングに発生したクラック

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[CASE 2] 雨漏りにつながりやすい、サッシ周りのひび割れ
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[CASE 3] ジョイント部の割れ
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地震などの影響によって、ALCパネルが破損することもあります。

[CASE 4] ALCパネルの破損
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[CASE 5] ALCパネルの欠落
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ALCは気泡に水分が浸透しやすく、水を含むともろくなる性質があります。
ここまで劣化が進むと、構造へのダメージや雨漏りが心配ですね…。

今回のコラムでは、ALC住宅にお住いの方も意外と知らない、ALCの基礎知識や長持ちのコツについてお伝えします。ALCにはどんな特長や弱点があるのかを知り、メンテナンスの参考にしていただければと思います。

◆ALCはこんな外壁材!

ALCは、100年以上も前からドイツやスウェーデンなどのヨーロッパで作り続けられている外壁材。”Autoclaved Light weight Concrete”の頭文字を取った呼称です。

ペースト状にしたケイ石・生石灰・セメントに発泡剤を添加し、気泡の発生したものを高温・高圧蒸気釜で10数時間焼き固めた軽量の気泡コンクリートです。

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画像参照元:https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/pb/powerboard/

一般的なコンクリートは強固な材料ですが、現場で打ち固めるので現場作業の精度が求められます。それに対し、ALCは工場でのパネル生産。品質レベルはJIS規格を遵守して一定に保たれており、バラつきの心配もほとんどありません。
パネルの厚みは、住宅向けのものでは厚み約37mm・50mmの2種類。サイディングの12〜24mmと比較すると、見た目にもわかるほどがっしりとしています。

耐火、強度、遮音、断熱などの高さから、一般の住宅はもちろん、梅田マルビルなどの高層ビルや正倉院・祇園祭の山車庫といった文化財を保管する倉庫、新幹線のホームやショッピングセンターなど、さまざまな建物の外壁として用いられています。

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画像参照元:https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/pb/powerboard/

耐火性においては国土交通省にも不燃材料として認定されており、ALC外壁の住宅は火災保険料が安くなるというメリットもあります。

◆ALCのウィークポイントを知ろう

機能性に優れた外壁材であるALCの特性を活かして長持ちさせるためにも、ぜひ知っておいていただきたいのが”ALCの弱点”です。

まずひとつは、継ぎ目の多さです。
例えば、サイディング板の横幅は910〜1000mm。それに比べてALCの横幅は305mm・610mm。設計の自由度を高めるため、小さめに設計されています。

つまり、外壁の継ぎ目がサイディングの約1.5倍になるということですね。
継ぎ目は多ければ多いほど、そこからの漏水リスクが高まります。
もちろん雨水の侵入を防ぐため、板間の継ぎ目にはシーリングという目地材を施工しますが、定期的な目地のメンテンスを怠ると、雨漏りの可能性がぐんと高まります。

もうひとつのポイントは、多くの場合 “2次防水が無い”という点です。
サイディングで施工した住宅の場合、外壁の内側には透湿シートが張られます。多少の漏水があっても、雨水がすぐに浸透するわけではありません。

しかし、ALCの場合は違います。基本的に透湿シートは施工しないため、クラックの発生やシーリングの劣化は雨漏りに直結するとお考えください。

シーリングの劣化が起こるのはサイディングも同じですが、ALC外壁にとってシーリングは最重要とも言えるメンテンスポイント。サイディングよりも念入りな注意が必要です。

シーリングの施工風景をご覧ください。

(1)プライマーを塗布し、外壁との密着性を高めます。
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(2)シーリング材をたっぷりと充填します。
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(3)丁寧にならして仕上げます。
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シーリング材を多めに注入して仕上げると、持ちが良くなりますよ。

◆ALCの防水は”塗装”が肝心!

ALCで特に気をつけるべき箇所はシーリングであると申し上げましたが、さらにもう一点、知っておいていただきたいことがあります。
ALCパネル自体に防水性はありません。現場での塗装によって防水機能を持たせています。
これも、しっかりと頭に留めておいてくださいね。

塗装やシーリングの劣化が外壁や構造のダメージにつながるのはALCに限ったことではありませんが、比較的リスクの高い材料であるという認識をお持ちになって、積極的なメンテナンスを心がけるのが長持ちの秘訣です。

シーリングの痛みやクラックが見られた時点で、お早めに再塗装を検討されるのが良いかと思います。定期的に塗装を行うことで経年による劣化を最小限にとどめ、ALCのメリットを充分に活かせるでしょう。

◆塗料選びは慎重に

ALCの継ぎ目に施されるシーリングは、ゴムのような柔らかい材質でできており、地震や台風などで建物が揺れた時にも、外壁の動きに追随します。地盤や交通量などの環境によっては、シーリングの上の塗膜が割れやすくなる可能性もあります。
気になる時は塗料選びの際に、ご依頼の施工業者さんにご相談ください。

また、ALCは蓄熱性の高い外壁材のため、透湿性の悪い弾性塗料の使用については慎重に検討することをオススメします。日当たりの良さなどの外部環境の影響とも相まって、塗膜の膨張や剥がれが生じ、再塗装時には弾性塗膜を全て除去しなければならない場合があります。

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◆まとめ

ALC外壁の長所や短所、メンテナンス時の注意について、ポイントを簡単にお伝えしました。
こんな外壁材なんだな…と大まかに理解していただけたのではないでしょうか。

まとめると、

(1) ALCとは、気泡を入れて軽量化したコンクリート

(2) 耐火、強度、遮音、断熱性が高い

(3) 工場成型のパネルなので、継ぎ目のシーリングが重要

(4) 2次防水が無いため、”塗装”が防水の要

(5) 環境によってはシーリング上の塗膜が割れやすい

(6) 透湿性の悪い弾性塗料は要注意

といったところですね。

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繰り返しになりますが、ALC外壁の優れた機能を長年にわたって維持するには、“定期的な塗装とシーリングによる防水”が非常に大切です。
まずはご自身の目でしっかりとチェック。気になった時は信頼できる業者に点検を依頼し、最適なメンテナンス時期を見極めてくださいね。